今回の九州人は「国産紅茶グランプリ2020」で熊本県で初めてグランプリに選ばれた坂口和憲さん。
熊本県水俣市の湯の鶴温泉を望む標高350mの山間地にある「お茶の坂口園」の三代目。
初代が植えた在来茶園を大切に守りながらも、新しい品種を取り入れ、現在では10品種のお茶づくりに励んでいる、まさに「和紅茶界のホープ」である。
坂口さんがグランプリに選ばれた「国産紅茶グランプリ」とは、「おいしい紅茶日本一のまち」として知られる愛知県尾張旭市の観光協会が開催しているもの。この大会は国産紅茶の品質向上などを目的に2015年から始まった。
「国産紅茶」は文字通り日本国内で生産されるものだが、別名「和紅茶」とも呼ばれている。緑茶と同じ茶葉から作る「和紅茶」は外国産の紅茶とは違い、柔らかな風味を味わえるのが最大の特徴。 渋みが少なくマイルドな味わいで後味もスッキリのため飲みやすく人気も徐々に高まっている。
坂口さんが勝負にかけたのは「はるべに」という商品。春摘みのべにふうき1枚1枚の茶葉を丁寧に揉み上げたフルーティーな香りと優しい味わいと口当たりが特徴だ。
グランプリ発表はコロナ禍のためオンラインで。それまで9位や10位に入賞していた坂口さんだったが、トップ10が発表される中いつも呼ばれるあたりで名前が呼ばれず、失格になったのだと最初は勘違いしたそう。そう思っていたところ、最終的に自分の名前が呼ばれとても驚いたと当時を振り返り教えてくださった。
グランプリ入賞後かなり多くのメディアに取り上げられ、徐々に催事やイベントに出店し県外でも「みなまた和紅茶」が認知され始めた。これは坂口さんの功績はもちろんのこと、もうひとつ、水俣が紅茶と縁が深い土地だということも理由にある。元々熊本県は国産紅茶の発祥の地。 中でも水俣市は熊本県紅茶生産量の7割を占めているのだそう。これらを強みとして、坂口さんをはじめとする和紅茶生産者と 熊本市、水俣市などの行政が連携し「みなまた和紅茶」のブランド化を図る活動を行っているのだ。
みなまた和紅茶が他の地域の和紅茶と違うのは、今でも種から植えた在来の茶畑が多く残っている点。その紅茶は香り豊かで滋味深く、他の産地にはない紅茶ができる。
その中でも坂口園での茶葉の美味しさについて坂口さんはこう話す。
「2つあります。まず1つ目は『寒暖の差』。標高350mにある茶畑は10度以上の寒暖の差があります。そのため香り高く味わい深い最良の茶が取れるんです。2つ目は茶葉を摘み取るタイミング。4月に芽吹いた茶畑に黒いネットを10日以上被せることによって茶葉の色は濃くなって、柔らかく旨味の凝縮された茶葉になるんです。摘み取り前の茶葉を常に気にかけて、一番良い状態で摘み取り製品にするんです。」
長年茶葉を見てきて、真摯に向き合ってきた坂口さんだからこそこの絶妙なタイミングをはかることができるのだろう。そんな茶葉の美味しさを最大限に感じるための淹れ方を教えていただいた。
「沸かしたてのお湯、98℃ぐらいで淹れると一番いい。蒸らし時間は3分程度を目安に、あとは自分好みで時間は調整するのがオススメです。ポットやカップはあらかじめ温めておくと最後まで冷めにくく美味しく頂けますよ」。
淹れ方によって本当に味も、口当たりもえぐ味も全く違うと坂口さんに教えていただいた。
坂口さんは飲み方を含めた「みなまた和紅茶」について、コロナ前は学校で授業を行っていたそうだ。
その理由を、「地元に残る人もいるかもしれないけど外に出ていく人が大半だから。『水俣ってなにがある?』って聞かれた時に『みなまた和紅茶』が頭に浮かぶだけでも嬉しいから、小学生や中学生など若い世代に「みなまた和紅茶」の魅力を伝えたい」と思いを話してくださった。
そして最後に今後の目標と意気込みをうかがった。
「今はみなまた和紅茶のブランド確立を目指して、みなまた和紅茶実行委員会で活動中です。全国、そして世界へと夢は膨らみますが、 私はみなまた和紅茶の普及は地元からと考えております。外への発信ももちろん大切だと思いますが、 まずは地元の方に知って頂き、地域全体で盛り上げ地域ぐるみでブランディングしていくことが大切だと思います。これから、愛されるみなまた和紅茶を目指し実行委員会一同で頑張って参ります」。
是非「みなまた和紅茶」を楽しんでみては?